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「まざまざと眺めてみれば卵とは争うことを知らぬ形よ 小塩卓哉」という短歌に対しては「『よ』という詠嘆には、争うことの多い作者自身の日常が、背景にあるのかもしれない」とある。するどいなあ、と思った。
一方作者は文庫版あとがきで書いている。「本書を読んで『なるほど』と思ってもらえたら嬉しいし、逆に『そうは思わない』と感じてもらっても、またそれも嬉しいことだ」その言葉に甘えて私も異論をはさんでみよう。「白萩を見に来よというハガキの机の間に落ちて一年 ?!?小倉嘉子」には「無意識のうちに失礼なことをしてしまった。…本来なら焦ってしかるべきところだが、不思議なほどの静けさと落ち着きが、一首を支配している。…一年というもう取り返しのつかない時間がかえって作者をじたばたさせない重みとなっているのだろうと思う。」「不思議な静けさ」があるというのは賛成であるが、「無意識のうちに失礼をした」と作者は思っていないのではないか、と私は感じた。机の間に落ちたことを作者は実は知っていた。落ちたことを理由にして作者は実は返事を書くことから意識的に逃げていたのではないか。「白萩を見に来よ」という人と作者との関係を想像してみる。少しだけ親しくて、少しだけ疎ましい。
「それぞれの解釈は、読者のそのときの状況や気持ちを反映して、変化?!??るものだ」と私も思う。どちらにせよ、素敵な歌ばかりがそろっているアンソロジーです。「かたくなにほほえんでいる降りてきて泣いていいよと誰か言うまで 蝦名泰洋」
表題にもなっている若さとはこんな淋しい春なのかは彼の句です。
小林恭二がまるまる1冊書いているのかと思って購入したので,少しあてが外れましたが,
心に引っかかるいくつかの句に出会えたので,結果よかったです。
でもこの俳人にはじめてふれるのは,この読本よりも単独の句集のほうがふさわしい気がします。
初出時の媒体がバラバラなこともあって、目次に並ぶ章名には、石川淳、幸田露伴、森鴎外、永井荷風、谷崎潤一郎、大岡昇平、三島由紀夫、橋川文三、山田風太郎、と、よく言えばヴァラエティに富んでいて、悪く言えばいささか一貫性がない。
各章それぞれに含蓄があり、「なるほど」と目から鱗が落ちるような思いを何度かした。「テキストを読み解く楽しさ」を再認識させてくれる一冊。